眺めのいいブログ

人生は参考文献だらけ

タイ王宮内のテキスタイル博物館が素晴らしい。

1960年6月、現タイ国王のご両親であるラーマ9世とSiriKit王太后アメリカに1ヵ月滞在したのち、15程の西洋諸国を訪問された。その際に王太后が実際にお召しになったアフタヌーンドレスやスーツなどのDaywear類、イブニングドレス・イブニングスーツのEveningdress類、お帽子・くつ・衣装用キャリーケースなどの小物類が、タイ・バンコクの王宮内に位置するテキスタイル博物館

QUEEN SIRIKIT MUSEUM OF TEXTILES

Fit For A Queen – QUEEN SIRIKIT MUSEUM OF TEXTILES

で展示されている。

Fit For A Queen展は美と気品で溢れた展覧会だ。豊かで奥深い衣装の世界を味わえる。クラシックなデザインのものから、タイの要素を組み込んだドレスまであり、どの服飾品も、それ自体の魅力が最大限に発揮されるようにディスプレイされており、目の保養にぴったりの空間であった。

 


QSMT Fit for a Queen

展示品はさることながら、そのキャプション内容や展示品に関するパネルも面白い。興味深いことが書かれていて、新しい事を楽しく知ることができる。私は展覧会を通して、次の3点を新たに知った。

 

まず、1960年あたりのタイとアメリカの関係のこと。当時、タイはアメリカをはじめ西洋諸国と関係を強化することを望んでいたが、アメリカにとってもタイは重要な国家だったようだ。南アジアの各国が共産主義を取り入れていく中で、タイだけは違ったためだ。アメリカはタイを共産主義に対抗するための場所にしたかったみたい。だから、1960年のタイ国王夫妻のアメリカ訪問は双方にとって重要な意味を持っていた。

私のこれまでの人生では、日米関係とか米中関係以外で、アメリカとそれ以外の国との関係について考えを及ばせたことがほぼなかった。なので、タイとアメリカの関係に目を向けるのは、新鮮だった!

 

続いて、Pierre Balmain さんのこと。この1960年アメリカ・西洋諸国訪問のためのシリキット王妃のワードローブ製作は、ピエール・バルマンさんとともに行われた。ピエール・バルマンさんは、バレンシアガ・ディオールと並ぶ「3代デザイナー」だそうだが、私は知らなかった。勉強になった!

www.vogue.co.jp

最後に、服と表象関係のこと。Fit For A Queen展を見ていると、自身が身に纏うものからどんな意味合いが発されているのかに王妃が多大な注意を払っていたことが分かる。西欧社会の文化や社交界のマナーを理解していて、かつ、タイらしさやタイのオリジナリティーも熟知している。そんな姿を体現するため、お召し物に力を入れられたようだ。つまり、王妃を始めタイの代表の方々のお召し物は、タイという国家がどのような国なのかを表すためのツールでもあるのだ。シリキット王妃達の服装や振る舞いは、アメリカやヨーロッパ諸国の主要人物が、タイがどんな国であるのかについて判断するための材料のひとつであった。

私は大学の授業で視覚文化論系の講義を聞く機会があったんだけど、まさにその講義内容の具体例!という感じで、ストンと入ってきたし、やっぱり王族貴族の方々って気を遣わなければいけない点が多くて大変そうだな〜〜という至極当たり前のことを再び認識した。ドレスを美しく着こなして、宮殿や壮大な建築物の中で繰り広げられる社交界の中でいろんな人と交渉事を捌いていくのに憧れがあるので、、。

展覧会鑑賞後は、併設されているミュージアムショップへ。もちろんショップ内も美しい。この壁紙、おしゃれでしょ?

f:id:utoka22:20181211003020j:plain

私は、知的好奇心を満たすという名目で(実際はお家での目の保養のための観賞用)図説を購入。 非常に満ち足りた足取りで、博物館を後にした。

 

ところで、この博物館は王宮の迎賓館などがあるエリアに位置している。そのため、エメラルドブッダがあるゾーンに比べたら、人が少ない。また外国人観光客は観覧料が無料だ。何より、博物館内はクーラーが効いていて涼しい!ぜひ王宮を訪れた際は、このテキスタイル博物館も見学してみてほしい。Fit For A Queen展は2019年1月30日までだそうだ。また、この博物館はタイはもちろんアジア全般のテキスタイルを保存収集している。現在は、バティックの展覧会も開催中みたい。

A Royal Treasure: The Javanese Batik Collection of King Chulalongkorn of Siam – QUEEN SIRIKIT MUSEUM OF TEXTILES